ウンコはいかにして土に還るか:野糞跡掘り返し調査の記録その4

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2:冬場の野糞分解

 冬は寒さのため、ハエもアリもフン虫もほとんど姿を現さず、昆虫による食分解はあまり見られなかった。しかし獣が掘り返した割合は、餌不足のせいか、夏よりも多かった。
 その一方でカビの活躍が目立ち、ウンコ全体を白くカビが覆うものが多数あった。しかし分解速度は非常に遅く、冬場の調査は12月から3月までの4ヶ月間で行ったが、最も分解の進んだものでも、かろうじて柔らかチーズ状までだった。これは夏場の分解の2〜3週間分に相当し、およそ5倍の時間がかかっている。
 なお、バフンヒトヨタケの菌核の発生量は、夏の調査時よりもはるかに多かった。
 その後5〜6月に、掘らずにおいた残りの調査用野糞を掘って調べたところ、ミミズや団粒土が現れ、樹の根も少し伸びてきた。分解が滞っていた冬場の野糞でも、暖かくなればきちんと分解が進んでいた。
 さらに秋になると、バフンヒトヨタケだけでなく、アシナガヌメリも大発生した。このキノコはアンモニア菌として有名で、ウンコの中にあった蛋白質が分解してできたアンモニア(毒性あり)を分解吸収してくれたのだろう。

 私はキノコ写真家として30年以上、各地にキノコを追い求めてきた、しかし、アシナガヌメリには3〜4回しか出会ってない。じつに10年に一度という珍しいキノコだ。それなのにこの冬場の野糞調査では、63点の調査野糞のうち、なんと37点に発生した。6割の発生率という、とんでもない数値だ。おまけにこのキノコは菌根菌でもある。分解が遅いからと、多少の不安があった冬場の野糞だが、ニンゲンの想像をはるかに超えた自然の力に脱帽した。そして野糞の正しさにも、なお一層の自身を得た。

※もっと詳しい調査内容やデータ、写真などが『くう・ねる・のぐそ』(山と渓谷社)や『ノグソフィア』4〜6号に掲載されています。興味のある方はそちらをご覧ください。