下肥はどんな味?

[便論糞ぷん]

posted on 2011.02.02

一昔前までの日本の農業では、ウンコやオシッコは大切な肥料だった。糞尿を肥溜めに満たしてしばらくおき、下肥として熟成したかどうかは味を見て確かめたという。私が糞土の味見をしようと考えたのは、じつは「下肥の味見」がきっかけだった。

しかし糞土は、主に土の中にいる菌類が好気性分解して出来たものだ。それに対して下肥は、元々ウンコの中にいた腸内細菌が、肥溜めの中で嫌気性分解したものだ。同じウンコの分解物でも、何か違いがあるかもしれない。下肥の味を教えてもらおうと、まだ現役で百姓をしているSさんを訪ねた。

Sさんは昭和40年(1965年)頃まで、実際に下肥を使っていた。しかしSさんが熟成の目安にしていたのは、味ではなかった。1年かそれ以上経って肥溜めの中で発酵が終わり、臭いが無くなることだった。そして、自分では口にはしなかったが、おじいさんの代の人から下肥の味を聞いていた。それは、甘い!
私の味調査でも、糞土はむしろ旨かったし、1点だけだが「ほんのり甘い」という記録がある。やはり下肥も旨かったのだ。私はうれしくなった。そしてSさんはこんな話もしてくれた。

「今は化学肥料ばかり使うから畑の土が硬く固まってしまったが、下肥を使っていた頃はやわらかくてふっくらしていた。そして作物に病気が出ても、下肥をまけば病気は治ってしまった。」
下肥に殺菌効果があるというよりも、非常に優れた養分があるから作物が元気になり、病気をはねのけてしまったのだろう。こんなにすばらしい下肥がどうして廃れてしまったのか、本当にもったいない。化学肥料の手軽さと清潔志向が、結果として土を殺し、大量の農薬を使わせている。

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