ウンコは第三極

世界の人口は昨年ついに70億を越え、近い将来100億に達するという。食糧は、資源は、ゴミは、環境は、そして人類も含めた全ての生き物の未来は、いったいどうなるのだろう?
縄文人やアイヌなどの先住民のような生活をするならまだしも、ますます多くの資源や食糧を消費する現代人にとって、人口問題は震災や原発事故以上の危機をもたらすに違いない。

人間の生き方は、科学の発展で豊かさを実現したり危機を乗り切ろうとする科学技術派と、自然の摂理に即して生活しようとする自然派の二つに大きく分けられる。
しかし世界の隅々まで便利なものがばら撒かれてしまった現在、本物の自然派は急速に減少し、今や絶滅寸前の風前のともしびだ。その一方で、文明社会の中にあっても、その危うさやいかがわしさに気付き、パーマカルチャーなど、自然に目を向ける動きが増してきたことに救いを感じる。

本来は人も自然の一部。理屈抜きで生活全体が生態系の循環の中に収まっていた。だが、文明を知ってしまった現代の自然派の大部分は違う。少なくともウンコも死体も、己自身を循環の中に置いてはいない。自然の価値は認めていても、そこから自分に都合の良いものだけを得ようとしているのではないか。いわば、つまみ食い自然派だ。自分のための自然利用を越えて、自然との真の共生に参加するのが本物の自然派だと考える。

糞土師活動の趣旨は『食は権利、ウンコは責任、野糞は命の返し方』。食は他の多くの生き物から命を奪うが、それは人の宿命であり、生きる権利だ。そして権利を行使するなら、責任が詰まったウンコを生態系に組み込み、奪った命を返すことが共生を実現する方法だ。
科学技術派と現代の自然派に対して、糞土師は第三極として、ウンコ(野糞)派を提唱したい。

第三極とは言っても、対立や攻撃が目的ではない。生態系の循環を実現するという、他の二者に欠落している真の共生を、その象徴である野糞で明確化したいと考えている。
もちろん科学にも自然指向にも優れたものは沢山あるし、糞土師自身もその恩恵を受けながら生きている。この社会が、いまさら原始社会に戻れるはずもない。三者それぞれの優れた面を集約し、権利と責任のバランスがとれた人間社会に変えていきたいのだ。