舌が命 - 糞土師最大の危機は乗り切れるか? 第2回

[糞土師のひとりごと]

posted on 2016.02.21

※「糞土研究会 ノグソフィア会報 21号(2015/12/31発行)」の記事を9回に分けて掲載します。

<<第1回

<第2回> 夢の小線源治療

そうこうする内に、過過糞(すぎかふん):前田敏之さんから思いもかけない朗報が届いた。WEB担当で講演会運営の要にいる前田さんにも舌がんの件は知らせてあり、心配した彼は得意のインターネットを駆使し、素晴らしい治療法を探し出してくれたのだ。
それは『小線源治療』といい、放射線の出る針を直接舌に刺してがん細胞をやっつける。この治療なら切らずに済み、回復も早いのだが、問題はⅡ期までのがんにしか使えないことだった。私のがんはⅢ期だが、なんとしてでも小線源治療で行こうと決意し、それは御茶ノ水の東京医科歯科大学病院で受けられることもわかった。
さっそく次の診察で担当医にその旨を伝えると、小線源治療が失敗した場合の怖い話を交えながらも私の決意に押され、渋々(?)紹介状を書いてくれた。それからは中央病院と御茶ノ水を行ったり来たりの病院通いに忙殺される日々がはじまった。
様々な検査に加えてⅡ期までがんを縮めるため、抗がん剤と放射線治療を中央病院で受けながら、御茶ノ水では歯科も交えて小線源治療の準備を進める。同じ日にそれぞれの病院に通うことすら一度ならずあったほどだ。
そんな状況にありながらも、治療の合間をぬって6月中に奥会津、京都、信州菅平で講演会を7回、フィールドワーク2回、そして対談を一つこなした。ちょっと無謀かもしれないが、私にとってはこれが「生きる」ということなのだ。

予想以上の速さでがんは小さくなり、20回予定していた放射線治療は15回で終了。抗がん剤の服用も7月7日で終わり、13日に東京医科歯科大学病院に入院した。治療中は口が一切使えなくなるため、食事も薬も鼻から通したチューブで注入する。その予行演習や、顎や歯茎への悪影響を避けるために装着するスペーサーという入れ歯のようなものの調整などの準備を経て、15日にイリジウム針を舌に刺し、いよいよ7日間の小線源治療がはじまった。
舌に放射線源を埋め込むということは、私自身が放射性物質になるということだ。病室は放射線が漏れないようにガッチリ作られた隔離部屋で、もちろん外出は禁止。面会も厳しい制限がある。放射線治療の影響ですでに6月半ばから味覚は失っていたのだが、食感すらない流動食と薬は部屋の入り口に置かれ、その後は全部自分一人でやるしかない。ナースコールを押さなければ看護師は来ないし、来ても放射線を遮断するぶ厚いつい立て越しの筆談という不自由さ。舌はパンパンに腫れて少しでも動かそうものなら痛みで引きつる。大量に出る唾や痰は吐き出すことも飲み込むこともできず、仰向けで眠るのは危ないので横になって垂れ流しという情けなさ。オシボリのみでシャワーもない一週間は、楽しみといえばウンコをすることくらいだ。ところがこれこそ、糞土師にとっての大問題なのだ。

>第3回 糞土師 入院に負ける

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