舌が命 - 糞土師最大の危機は乗り切れるか? 第4回

※「糞土研究会 ノグソフィア会報 21号(2015/12/31発行)」の記事を9回に分けて掲載します。

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<第4回> 治療が終わって糞土師は・・・

7月21日の昼近く、舌に刺した針を抜いて小線源治療が終了した。それまでの痛みと不自由さから、治療が済んでもしばらくは辛い日々が続くだろうと覚悟していたのだが…
さほど苦痛もなく次々に針が抜かれてゆく。最後の1本が抜かれて舌が自由になった。しゃべれる!ものの10分と経たないうちにほぼ平常の状態に戻っていた。病室で荷物をまとめて退院の準備をしていると、間もなく昼食が運ばれてきた。五分粥だが痛みもなく普通に食べられる。予想をはるかに超える小線源治療の素晴らしさだった。講演会でしゃべるのが専門の私にはちょっと当てはまらないが、普通の仕事なら退院後一週間で職場復帰できるというのは本当だった。
治療中こそ辛いものの、こんなに優れた小線源治療がほとんど知られず、広まりもせず、「絶滅危惧医療」とまで言われるのはなぜだろう。具体的なことは割愛するが、ひとことで言えば医療業界にとって旨味のない、あまり儲からない治療法だからだ。金銭経済最優先社会への批判はさておき、その後の経過に話を進めよう。

6月から続いていた味覚障害は、退院後ひと月も経たない8月半ばから、医者も驚くほど早く、急速に改善していった。生きるよろこびの一つが、おいしく食べること。しばらくはまるで「餌」だっただけに、この時ほど食への感謝を強く感じたことはなかった。その一方で、小線源治療の説明時に言われたように、退院して間もなく酷い口内炎の痛みに悩まされるようになった。しかしそれも8月の頭をピークに、徐々に快方に向かっていった。
そしてまた、口内炎が治るまで三ヶ月くらいは講演会を控えたほうがいいとも言われていた。しかし治療のために6月から8月に予定していた講演会を八つキャンセルしたのが悔しくてならず、その分を早く取り返そうと、9月以降の講演会に闘志を燃やしていた。
8月末に急遽、前田さんが主催する「月3万円ビジネス夏祭りin高円寺」で、小手調べのつもりで軽く40分のミニ講演をさせてもらった。舌はまだちょっともつれ気味だったが、まあまあの出来で、そろそろ大丈夫だろうと慢心したのがまずかった。

第5回 危険な講演再稼動