ウンコの価値と、それを大地に還す意義を理解したら、次には野糞の方法をしっかり考えねばならない。

自然に即した生活様式から遠く離れてしまった人間社会では、下手な野糞はいたずらに混乱を招いてしまうに違いない。森林や野生動物などの自然環境の衰退と減少に加え、人口過多や人々の生活形態・意識の変化などにより、現在はのびのびと野糞ができる社会環境ではない。そのような状況の下、特に野糞を悪とみなす人々からいたずらに非難され、野糞本来の目的が妨害されないよう、正しい野糞のマナーを確立することも重要だ。

一応私には、17年の経験の末に到達した『伊沢流インド式野糞法』という、現時点では最良と考える方法がある。しかし、今後広く一般化することになれば、新たな問題も生じて、さらなる改良を迫られるかもしれない。伊沢流野糞法は別項で詳しく解説するとして、ここでは簡単に要点のみを記す。


[イラスト:小池桂一]

『場所選び、穴掘り、葉で拭き、水仕上げ、埋め戻し、最後に枯れ枝で目印を立てる』

1、高山や湿原、清流、原生林など、繊細なバランスをとって成立している自然環境だけでなく道路上など他人に迷惑になる場所は避ける。

2、出しっぱなしの汚らしい野糞ではなく、分解も速やかに進むように、径20センチ、深さ5~10センチほどの穴を掘って脱糞し、きちんと埋め戻す。

3、腐りにくいティッシュペーパーは使わず、自然のままの葉っぱを活用する。

4、水で清めるインド式は、排便をより爽快にするだけでなく、自分の手で直接肛門やウンコに触れて始末することで、ウンコの実感をより身近に引き寄せることができる。

5、土に埋めたウンコが分解して土に還るまで、再度同じ場所に野糞をしないように、穴の上に×点に枯れ枝を立てて目印にする。

6、ウンコの分解が済むまでに、夏場ならばおよそ一か月。寒い冬のウンコでも暖かい春~初夏になれば一気に分解が進む。その後土中の無機養分は植物に吸収されるが、分解から吸収までに要する時間は、季節が一巡する一年あれば充分だ。それに対して、目印の枯れ枝が朽ちるまでには2~3年かかる。野糞のし過ぎで富栄養化を防ぐには、一ケ所につき野糞は1年に1回限り。この鉄則を守るためにも、枯れ枝の目印は重要だ。