恥じらいのバケツ野糞 会報19号(2014年)より

一糞法師:新保 あずさ (埼玉)

野糞はしたいが都市部に住んでいるとか、たとえ田舎でもどこで誰に桃尻を見られてしまうかもしれず、なかなか野糞に踏み出せない。夏場は特に、デリケートゾーンを虫に刺されやしないか気が気じゃない。などという方に(すべて自分のことです)お奨めの野糞法をご紹介します。

2014年2月、伊沢さんの講演を聞き感銘を受けた私は、さっそく実践に移したいという気持ちに駆られました。しかし、都会とは言えないけれど行き交う人の多い所謂ベッドタウンに住んでいるため、どうしたものかとお尻をむずむずさせていました。幸い徒歩5分くらいの所に小さな雑木林があり、お花摘みをするならここしかない、と目星をつけたものの、すぐ近くに小学校があり、人通りも少なくないこの場所での野糞は、嫁入り前の私には非常に敷居が高い。いや、嫁入り後でも相当高い・・・・
フンフン悩んでいると、それならば自宅で脱糞し、林へ持ちこみ、大地へお返ししてはどうか、という天からのお告げがありました。これだ! 臭いがもれないように密閉して運ばなければ! それも世の中に出たらすぐに! まずは密閉できるタッパーの入手だ!と鼻息を荒くしていると、師から連絡が。そこでこのいきさつを話したところ、「土や落ち葉を入れた器にウンコをして、土で覆っておいてはどうか。そうすれば土中の菌が分解を始めてくれるし、臭いも気にならないはず。」とのアドバイスを頂戴し、タッパー作戦は中止。バケツ野糞という方法に行き着いたというわけです。

①林へ行き、小さめのバケツに15cmくらいの深さまで土や落ち葉を入れてくる。
②バケツの土の中心あたりを少し掘り、そこに脱糞。
③周りの土や落ち葉をかぶせる。
④人目につきにくい早朝や夕方以降に林へ持って行き、大地にお返しする。
これが、「恥じらいのバケツ野糞」の方法です。

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ちなみに、脱糞後すぐに林へ行けるときはいいのですが、朝は出勤前で時間がなく、帰りが遅いと暗くて億劫、という日もあり、3日くらいそのままにしていたこともありました。その場合は3便ほどが一つのバケツに入っていることになりますが、きちんと土で覆われていれば全く問題ありません。ただ、不思議なことにバケツにウン子が居るままだと、なぜか腸内にまだ留まっているような、まるで便秘のような感覚があります。林にお返しできて、やっと、「出た!」と晴れ晴れスッキリするのです。大地にお返しできたという心持ちによるものでしょうか。

バケツ野糞をはじめたのは、春の気配がうっすら漂い始めた3月27日のこと。そして、お尻拭きも葉っぱで行うことにし、初日はちょうどそのころ林に繁茂していたフユイチゴを使いました。葉の裏に短い毛がたくさん生えていますが、それほどフワフワしているわけでもなく、お尻が敏感な私にとっては、葉っぱを使うとこんなものか…というのが正直な感想でした。しかしもっと尻心地のよいものもあるだろうと、翌日は、仕事場のハーブ園にたくさん生えているビロードモウズイカと、フキノトウを試してみました。
田舎では容易に見つかるフキノトウですが、市街地では貴重です。それに、食べることで大きな幸せを感じていたフキノトウを、お尻拭きに使うという贅沢さも相俟って、その心地よさは言葉に尽くせないほどでした。ビロードモウズイカも、フユイチゴに比べるとずっと尻触りがよく、これは自宅でも育てることに。
植物とのこれまでにない付き合い方に出会い、そしてトイレットペーパーより気持ちの良い葉っぱも色々ありそうです。毎日の脱糞が、排泄による本能的な快感を超えて、エンターテイメント的な色合いを帯びるようになりました。

そんなこんなで間接的な葉っぱ野糞を続けて2ヶ月ほどたった5月27日。山の斜面に借りている畑の手入れをしている最中に、排泄欲求が沸いてきたのです。それまで本当の野糞をしたことがなかったわけですが、実は畑に足を運ぶたびに待ち望んでいたチャンスでもありました。その日は幸い、周りに人は見当たりません。しかし、100mほど離れた所には民家があります。が、私の下した判断は「いける…!」。すぐさま畑の端に穴を掘り、ズボンをおろして脱糞。目の前にあるヨモギの葉を使って尻を拭き、ズボンを上げる。文字通り瞬く間に初の野糞を済ませました。かなりのスピードで儀式を執り行いつつも、鳥のさえずりや爽やかな風、草の青々とした匂い、一面に広がる空を身体いっぱいに堪能しながらの野糞の心地よさといったら…服も世間体も脱ぎ捨てて、そのままゴロゴロと山を転げ落ちたいくらいでした。
それから約1ヶ月後、このときのウン塚を掘り返してみることにしました。すると、掘れども掘れどもウン子らしいものが見当たらず、どうやら1ヶ月ですっかり土に還ったようでした。ここは私のフン塚…と思うと、茶色い土がとっても栄養豊富で肥えた土に見えてくるから不思議です。

その後も川のほとりなど、心地よい場所での野糞を数えるほどですが経験しました。今回の寄稿ではバケツ野糞を一つの方法として紹介しましたが、自然の中で行う儀式の圧倒的な気持ちよさには到底及ばない!と気がついてしまったことも、忘れずに付記したいと思います。